韓国は、日本から最も近い国であり、歴史的にも深いつながりがある。自然環境や風景が似ているのみでなく、町並みや生活感、人々の服装や行動等にも親近感が湧く。田園地帯を旅すると、日本の懐かしい農山村の風景がそこにあると錯覚を覚えるほどよく似ている。他方、距離的に近いにも拘わらず、その医療文化は余り知られていない。しかし、韓国の医療はレベルも高く清潔で、我々にとっても極めて安心して受診できるものであろう。 韓国で若干違和感があるのは、言葉と文字だけと思われる。理由として、中国や台湾では、言葉がわからなくても新聞や看板の漢字は読める。会話ができない人が米国や英国を訪れても文字は読める。ところが韓国では、ほかの事は極めて近い国であるが文字はわからない。これには正直戸惑いを感じる。韓国を訪れた日本人の多くは文字によるコミュニケーションの重要性を再認識するのではないだろうか。 

円高を利用してソウル3日間のツアーで訪れたR子さんら4名は、ホテルロッテにチェックインした。折角午前の便で来たのだから時間を効率的に使おうと、早速市内散策に出かけた。ホテルから程近い明洞を散策し、ある青磁を売っているお店を出たところで、段差に足を取られたR子さんが右足をくじいてしまった。捻挫くらい、と思ったが痛みで歩けない。4名が慌てていたところ、お店の人が救急車を手配してくれた。救急車は119番で日本と同じ、また無料であることも同じである。行き先を選べないのも日本と同様である。救急隊にS総合病院まで運ばれ、そこで手当を受けた。診察とレントゲン検査の結果骨折はなかったものの、動かさないために固定装具としてギブスではなくエアーキャストと呼ばれるものが装着された。これは、スキー靴を軽くしてつま先が出るようにしたようなもので、内側には低反発のウレタンが一面に装着されている。 バックルを締めるとギブスのように固定されるだけでなく、膝から固定されるため足関節に負担をかけずに歩行することも可能である。また夜には、これを外して血行を良くして休むことができる優れものであった。このため行動の制限も少なく、観光客には特に有り難い。期待していたよりずっと満足度の高い治療を受けたR子さんは大変喜んだ。治療費も日本の保険会社に直接全額請求してくれるという親切な対応に一同感激したものであった。看護スタッフの心遣いもこまやかで心地よかった。

そのあと、4名は折角の機会だからと病院内の探検に出かけ、受診手続きと、施設の様子と使われ方を得意の英語で聞いて回った。その結果、医療文化は日本のものに極めて近いと思われた。欧米で一般的なオープンシステムではなく、日本と同じクローズドシステムである。契約しているジェネラル・プラクティショナー(GP)やホームドクターの紹介がないと入院できない欧米型と違い、自分で病院を選び 受診が可能で、必要であればそこで入院もできる。個人のクリニックであっても、患者が自由に選択することができる。 受付手続きの後、待っていると順番に呼ばれて診察が受けられる。つまりフリーアクセスといわれる日本と全く同じシステムである。

現地の日本人は言葉の問題があるため、医師が日本語を話す病院か、外国人用の医療施設に行くことが多い。例えば、サムソンメディカルセンターは 病院運営のコンピュータ化が進んでおり施設もサービスも行き届いていて大変素晴らしい病院である。その中にインターナショナル・ヘルス・サービス(IHS)と呼ばれるフロアがあり、外国人の診療を専門に行っている。ここには以前日本語通訳がいたが、今はいない。理由は日本人患者数の減少だそうだ。日本人は、距離が近いため治療が必要な場合に日本に帰ってしまうひとが多いという。

ソウル国立大学医学部付属病院にも素晴らしいIHSがある。いくつもある外国人が診療を受けられる病院はどの病院も清潔で、日本の病院と同様のサービスが受けられる。また、日本人で入院した患者は、各病院のホテル並みの病棟に驚くことも多い。但し、料金は日本の病院よりかなり高い。
 

韓国の医療機関では、心づかいのこまやかなスタッフに囲まれ、レベルの高い医療を、外国人用の素晴らしい施設で受けることができる。 病気やケガの際には慌てて帰国せずに、その良さを是非お試し頂きたいものである。

以上  

2009/2/25

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