台湾は観光客から見ても駐在員から見ても居心地の良い国といわれる。人々の日常生活では感覚的に日本と近いところが多く、社会はかなり近代的であり、また、食べ物は同じ中華料理でもどちらかというと日本人好みの味付けと言える。

台北では社会インフラの整備も進み、ほぼ快適といえる生活が期待できる。家賃1万元程度(2万8千円程度)の部屋のレベルは若者であれば問題なく、また、日本人駐在員は3万元(@元/2.8円)程度のところに住んでいる人が多い。なお、駐在経験のある方の話によると家具付きの部屋を選ばないと、部屋(箱)だけを借りるようになり、全てを別途購入しなければならないため、却って高く付く場合があるという。
治安については日本と同程度か、若干良いようにいわれるが、観光客の保険請求から見るとコソ泥は少なくはないようである。

  気候は温暖な亜熱帯であり、年平均の最高気温が26.5度、同最低気温が19・9度と、湿度を除けば日本より熱くもなく寒くもない、過ごしやすいところである。従って病気などは少ないかと思うが、海外勤務健康管理センターのHPでは、旅行者下痢症やA型肝炎、及び蚊から感染するデング熱等熱病や日本脳炎の注意喚起を行っている。街を歩いていると若干埃っぽい風が吹くこともあるがこれは、東京の舗装率が高いからそう感じるだけなのかもしれない。東京が当たり前なのではなく、台北が普通であるともいえる。

中山北路1段のホテル老爺大飯店に宿泊した旅行者のUさんは、喉がひりひりするため耳鼻科の医師にかかりたいと思い、ホテルフロントに相談した。Uさんが日本語で相談したところ、台湾人で流暢な日本語を話す担当が、近くの耳鼻科を紹介してくれた。日本の医療は国民皆保険制度とフリーアクセスを原則としているが、台湾もこれとそっくりの『全民健康保険制度』があり。フリーアクセスであることも同じである。つまり、国民のすべては公的医療保険によりカバーされており、また患者が希望する医師の(医療機関で)診察を受けることが可能である。これは日本人にとっては大変利用し易い。Uさんが紹介されたのは耳鼻科の専門医の先生であった。ご年配の先生で、少年のころ日本語を覚えたそうである。 診察も流暢な日本語で受けることができた。診所(クリニック)の2階が先生ご自身のお住まいとなっており、日本に良くある開業医の先生のところで診てもらっているようであった。診察時の先生とのやり取りも、世間話の仕方も日本の多くの医師と同じで大変リラックスしながら治療を受けることができた。医療器材や、ファイバースコープを鼻から入れて診るなどやり方も全く同じで違和感がなく、台北での通院であったが、大きな安心と満足とを得ることができたUさんであった。

前回オーストラリア編で紹介したヨーロッパやアメリカのGP制度やファミリードクター制度は、やはり日本人には違和感があり、必ず予約が必要等使い易いものではないが、台湾では診療受付手続きから診察の手順、投薬から精算まで日本のそれと全く同じであることが、病人には大変楽であり、有難く感じられたという。背景を聞くと、日清戦争のあと1895年に日本による台湾統治が始まり、その頃から本格的な近代化と都市化とが始まり、政治・経済・教育・文化に日本の影響を強く受けたため、台湾の文化全体は極めて日本のそれに近いのだという。日本と違うことについて考えてみると、台湾の人は寒がりであることと、誰もが子供と老人に優しいということなどがある。前者は気候が違うことから発生する。後者の大人の男性でも子供を見ると可愛がるのは、理由は兎に角良いところである。また儒教の教えからか、老人を尊敬しているように見える。電車やバスの中で若者が先を争って座席に座ったりはしない。あたかも昭和の日本の若者のようである。

現在の国の政策はIT産業等、知識集約型経済を強力に進めることに成功し、台北市の人口は670万人を超えているという。世界の金融危機といっても台北の街の活気は変わらない。急速に経済発展してきていることによる高い消費能力とそれに伴う産業の発展があり、活気がある。

各位が台湾で病気やケガで医師の治療を必要としたときは、日本と同様の医療環境であり、安心して診察を受けて頂きたい。知識・技術だけではなく感覚と精神文化が近いことがこれほどリラックスできるものかとお感じ頂けると考える。

以上  

2009/3/25

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